困っていることには理由があります
発達性ディスレクシア+αのこと

発達性ディスレクシアと他の特性を併せ持つと・・・

すーふには、たくさんのお子さんが「読み書きの苦手さ」を訴えていらっしゃいます。お会いしてみると、ほとんどのお子さんが、ディスレクシア以外の特性もお持ちです。動画をご紹介したKくんは、ディスレクシアだけ、と言ってもいいお子さんの代表だと思いますが、そういったお子さんは実は支援機関に繋がることは多くないと思われます。ディスレクシアだけ、のお子さんは、落ち着いてコツコツと努力を続けられ、苦手さに対して不安を抱えても、その気持ちをなんとか抑え込んで耐え忍び、友人関係が良好で、学校が楽しいことで、全体としては「まあ、いいか」と本人は思い、親御さんは、「もっとまじめにやればできる!」などと言い続け、小学校時代を過ごすことが多いかもしれません。でも、だからといって「平気」なわけではないことは、Kくんの文章が教えてくれていますし、中学生になって苦しんでいるお子さんに少なからず出会っています。
ディスレクシアに他の特性を併せ持っている場合、支援を考える時に別の視点が必要不可欠となります。

 

幼児期に出会うお子さんたちのこと

すーふに幼児期いらっしゃるお子さんたちは、ほとんどが、こだわりが強い、おともだちと上手に遊べない、1人で遊ぶことを好む、不安が強い、落ち着きがない、お友だちとのトラブルが頻繁におきる、危険な行動をする など集団生活での何らかの困り感があって、いらっしゃいます。そんなお子さんたちと幼児期から過ごす中、文字への興味を早くからもち、いつの間にか読めているお子さんもいれば、なかなか読めていかないお子さんがいらっしゃることに気づきます。特性のあるお子さんにとって、文字はとても頼りになる支援ツールなので、使えるならば、早めに使いたいと思っているために、年中さんから注意深く観察し、遊びの中で試していきます。その中で、年長さんになっても読める平仮名が増えていかないお子さんは、もしかしたらディスレクシアかも・・・?と気づくことができます。あくまでも「疑い」の段階ですが、他の特性を一緒に持っておられる場合、ディスレクシアだけの場合よりも、ディスレクシアがずっと大きな、学校生活におけるリスク要因になり得ますので、見過ごすわけにはいきません。他の能力に比して、文字の苦手さが明らかな場合、就学に向けて、就学してからも、丁寧に環境調整をしていきます。


学齢期、ディスレクシアを疑っていらっしゃるお子さんたちのこと

学習の躓き、読んだり書いたりすることの苦手さを訴えて、学齢期にいらっしゃるお子さんは、読み書き以外の特性も併せ持っていることが殆どです。

読み書きの苦手さと絡んで、以下の様なことが起こっていたりします。

先生の指示通り、とめ、はね、はらいが守れない自分を許せず、パニックになる。
先生からの指示を100%守りたいと思うため、苦しくなる。「適当に」流すことが難しい。
宿題をやることが苦痛でたまらないが、やらない、出さないことも受け入れられない。
書いた字が少しでも気に入らないと、何度も何度も書き直す。
間違いを指摘されたくない、指摘されると怒る。
感想、作文など、字が思い出せないだけでなく、書くこと自体が思いつかない。
メモするように言われても、何をメモしていいのかがわからない。
わからないことを先生に聞くという発想がない、または聞き方、聞くタイミングがわからず聞けない。
失敗を極端に恐れ、取り組むことを嫌がる。
教科書は読みたくない、音読の宿題もやりたがらないが、ゲームの攻略本は熱心に読む。
がんばって書いても評価が低いならば、やらない方がましだと考える。
授業では書きたくないが、自分の好きな分野のことであれば、好きなように書き続ける。
字が雑に見え、「きれいに!」「丁寧に!」と指摘されがち。
いつも落ち着きがないが、読んだり書いたりする時に、特に姿勢が崩れ、落ち着きがなくなる。
消しゴムで消して書き直すのが嫌いで、全部消さずに上から書く。
紙を押さえて、消しゴムで消すのがうまくいかず、紙がぐちゃぐちゃになる、紙が破れる。
枠に収まらずはみ出して書く、まっすぐ書けないが、さほど気にしない。
気が向くと宿題に取り組むが、気分にムラがある。すぐに飽きる。長続きしない。
やらなくてはならないことの量が多いとそれだけで、やる気がなくなる。
キライなことも好きなキャラクターがついていたりすると、それだけで取り組めたりする。
宿題など、寝る時間になってからか、当日の朝に突然思い出し、家族を巻き込んで焦って取り組む。
先生の話しを聞いていないので、どこが宿題かわからない。
メモするのを忘れる。メモしてもそれを見るのを忘れる。
やるべきプリントなどがどこかに行ってしまう。ぐちゃっとまるまって、机に入っていたりする。
などなど・・・・

いらっしゃるお子さんたちによく見られることをあげてみましたが、いくつかに当てはまりますか?少しだけ、という方もいらっしゃれば、ほとんど全部当てはまるという方もいらっしゃるでしょう。ディスレクシアに加えて、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動障害)などの特性をお持ちの場合、上記の様な形で現れたりします。上記のいくつかが当てはまる場合は、読むことも書くことも、「何度も繰り返し練習させる」といった一般的な練習が、全くの逆効果になる可能性が高いと思っていただきたいです。「成果の上がらない理不尽な繰り返し」は彼らには苦痛以外のなにものでもないことが多いです。そういった大人からの学習の負荷によって、感覚過敏が強くなり安心して教室で過ごせなくなったり、授業に落ち着いて取り組めなくなり、ふざけているように見え叱責され、結果、やる気を失う、といった現われ方をすることも少なくないのです。学校でのストレスが高まりすぎて、帰宅後ゲームやYoutubeがやめられなくなったりすることも、複数の特性を併せ持ったお子さんの中には少なくありません。学校ではまじめに取り組み、帰宅後家で荒れる場合も、要注意です。
お子さん自身に丁寧に話しを聞きながら、お子さんの特性を見極め、ひとりひとりのお子さんに合った、学習方法を、お子さんと一緒に見つけていくことがとても大事なことだと考えています。どうか、「学校の勉強」ということだけにフォーカスせずに、お子さんの全体像を理解した上で、「人生に役立つ学び と 学び方」を探っていって頂きたいです。